積算評価と収益評価の違い|銀行はどこを見るか
不動産投資の融資を調べていると、「この銀行は積算評価だから」「あそこは収益評価で見てくれる」といった話をよく耳にします。同じ物件を持ち込んでも、金融機関によって評価額が大きく変わり、その結果として融資が出たり出なかったりする——その背景にあるのが、この2つの評価方法の違いです。
この記事では、積算評価と収益評価がそれぞれどういう考え方なのか、金融機関はどこを見ているのかを、できるだけかみ砕いて整理します。融資は「自分の属性」「物件」「金融機関の方針」の3つがかみ合って通るものですが、物件評価の話は主に「物件起因」と「方針起因」が重なる論点として、打診先を選ぶうえで大きな手がかりになります。
積算評価とは?「土地+建物の積み上げ」で見る
積算評価とは、物件の価格を「土地の価値」と「建物の価値」に分けて計算し、それを積み上げて評価額とする考え方です。原価法とも呼ばれます。
土地の評価
土地は、面積に単価をかけて計算するのが基本です。単価としては、相続税路線価や固定資産税評価額などが目安として使われることが多いとされています。
- 土地評価額 = 土地面積 × 単価(路線価など)
たとえば路線価が1平方メートルあたり10万円で、土地が200平方メートルなら、単純計算で土地評価は2,000万円という具合です。
建物の評価
建物は、構造ごとに定められた「再調達価格(今もう一度建てたらいくらか)」の目安に延床面積をかけ、そこから経年による減価を差し引いて計算するのが一般的とされます。築年数が経った建物ほど、法定耐用年数に対する残存年数が減り、評価が下がっていきます。
- 建物評価額 = 再調達価格 × 延床面積 × (残存年数 ÷ 法定耐用年数)
この土地と建物の評価額を足したものが、積算評価額になります。【要確認:路線価・再調達価格の水準や減価のさせ方は金融機関ごとに内部基準があり、公表されていない。ここでの計算式はあくまで一般的に語られている考え方】
積算評価の特徴は、土地の価値が大きく効くという点です。土地が広い、あるいは路線価の高いエリアの物件は積算が出やすく、逆に築古でも土地値が高ければ評価が残りやすい傾向があるとされます。
収益評価とは?「その物件がいくら稼ぐか」で見る
収益評価(収益還元法)は、物件の価格を「その物件が生み出す収益」から逆算して評価する考え方です。積算が「モノとしての価値」を見るのに対し、収益評価は「事業としての稼ぐ力」を見る、と整理すると分かりやすいかもしれません。
直接還元法の基本的な考え方
実務でよく説明されるのが「直接還元法」です。年間の純収益(家賃収入から経費を引いたもの)を、還元利回り(キャップレート)で割って評価額を求めます。
- 収益評価額 = 年間純収益 ÷ 還元利回り
たとえば年間の純収益が300万円で、還元利回りを6%とすると、単純計算で「300万円 ÷ 0.06 = 5,000万円」が評価額の目安になります。還元利回りをいくつに置くかは、エリアや物件のリスクの見方によって変わり、これも金融機関ごとに考え方が異なるとされます。
収益評価の特徴
収益評価では、家賃収入と稼働の安定性が評価を左右します。利回りが高く、入居が安定している物件は評価が出やすい一方、空室が多い物件や、家賃が相場より高く設定されている物件は、評価が伸びにくくなる傾向があるとされます。
土地の広さよりも「いくら稼ぐか」を重視するため、土地値の小さい区分マンションや、都市部の狭小地でも収益力があれば評価されやすい、という面もあります。
銀行はどちらを見るのか|「両方見る」が実際に近い
ここが多くの人の気になるところですが、「積算評価か収益評価か」は白黒はっきり分かれるものではなく、多くの金融機関は両方を参照したうえで、どちらをより重視するかに傾向の差がある、と考えるのが実際に近いようです。
金融機関ごとに「重心」が違う
一般的には、次のような傾向が語られることがあります。ただしこれはあくまで大まかな傾向であり、同じ業態でも金融機関や支店、時期によって方針は異なります。
- 土地の担保価値を重視し、積算に重心を置く傾向があるとされる金融機関
- 事業性・収益力を重視し、収益評価に重心を置く傾向があるとされる金融機関
【要確認:どの金融機関がどちらを重視するかは公表されておらず、内部基準や担当者の判断にもよる。個別行を名指しで断定しないこと】
だから「物件と銀行の相性」が生まれる
この重心の違いこそが、「同じ物件でもA行は評価が出て、B行は出ない」という現象の正体です。
たとえば、土地値は小さいが利回りの高い物件は、収益評価に重心を置く金融機関のほうが評価が出やすいかもしれません。逆に、利回りは平凡でも土地が広く路線価の高い物件は、積算重視の金融機関と相性が良い可能性があります。
つまり物件評価の話は、「物件起因(その物件の性質)」と「方針起因(金融機関がどこを見るか)」が掛け合わさって結果が決まる、ということです。
実務でどう活かすか|物件と打診先の相性を記録する
積算・収益の考え方を、物件選びと融資打診にどう活かすかを整理します。
物件を見た段階で「どちらのタイプか」を仮説立てする
物件を検討する段階で、「これは土地値が効く積算タイプか、収益力で見る収益タイプか」をざっくり見立てておくと、打診先の当たりを付けやすくなります。土地の広さ・路線価、利回り・稼働状況の両面から物件を眺める習慣をつけると、評価のイメージがつかみやすくなります。
打診結果を記録して「相性マップ」を育てる
物件と金融機関の相性は、打診を重ねるなかで少しずつ見えてくるものです。次のような内容を打診のたびに残しておくと、次の物件で効いてきます。
- 打診した金融機関・支店・担当者
- 物件の土地面積・路線価・構造・築年数・利回り
- 提示された評価額や融資額、そして「積算・収益どちらを重く見た様子か」
- 評価が伸びた/伸びなかった理由は物件起因か、方針起因か
こうした記録がたまると、「土地値が出る物件はあの金融機関」「高利回り区分はこちら」といった、自分だけの当たり先の傾向が見えてきます。感覚だけで打診先を選ぶより、通過率を上げやすくなるはずです。
まとめ
積算評価と収益評価の違いを整理すると、次のようになります。
- 積算評価は「土地+建物の積み上げ」で見る方法で、土地の価値が大きく効く
- 収益評価は「その物件がいくら稼ぐか」で見る方法で、家賃収入と稼働の安定性が効く
- 多くの金融機関は両方を参照しつつ、どちらに重心を置くかに傾向の差がある
- だからこそ「物件と金融機関の相性」が生まれ、同じ物件でも評価が変わる
物件評価は、物件そのものの性質と、金融機関がどこを見るかの掛け合わせで決まります。物件を見たら評価タイプを見立て、打診結果を記録して相性を蓄積していくことが、融資を効率的に通していく土台になります。
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